大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和22(れ)125 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人A弁護人佐藤源市の上告趣意は「原判決ハ被告人Aノ第二ノ犯行ニ付キ「

被告人三名は原審相被告人B、同C、同D外二名と共謀の上昭和二十一年六月二日

大阪市a区b町c番地E方に於て同人等に対し原審相被告人Bは海軍ナイフ同Dは

出匁庖丁を突きつけ以て被告人F原審相被告人Dは右Eを細紐で縛つた後「金を出

せ」と申し向けて脅迫しその反抗を抑圧した上右E所有の現金二千五百円衣類、雑

品合計五十点余及び約米一斗二升を奪取し」ト摘示シ証拠ヲ案スルニ「一被告人A

同Gに対する各予審第二回訊問調書中に同人等の供述として各関係部分に付判示同

趣旨の記載あると一、E提出の強盗被害始末書中に判示に照応する被害顛末の記載

あるとを綜合して之を認め」ト為シ被告人ヲ刑法第六十条ヲ適用シ強盗罪ノ共同正

犯ト断定シタリ然レトモ原審公判調書ニヨレハ被告人ハ「私等ハ其日十三ノ洋服屋

ニ強盗ニ行カウト云フコトテ其所へ行ツタノテスカ戸締カ厳重テアツタ為メ断念シ

折カラ雨カ降ツテ来マシタノテ私トFトHハ帰ラウト云ツタノテスカIカラソンナ

義理悪イ事ヲスルト承知セヌト脅サレタノテ御訊ネノEト云フ家ニ行ク様ニナツタ

訳テアリマス、ソノ家ニ行ツテカラJトKカ喧嘩ヲ始メマシタノテ私ハソレヲ本当

ノ喧嘩ト思ツテ止メマストJハ私ヲ睨ミ付テソレテDカ短刀ヲ出シテ主人ニ掛ツテ

行キマシタ其時初メテ其喧嘩ハ狂言タト判ツタノテアリマス私ハソノ様ナコトハシ

タクナカツタノテ小便ニ行クト云ヒ其家ノ表ニ出テ向側ノ家ノ所ニ行ツテシヤカン

テ居リマシタ暫クシテ右ノ家ニ這入ツテ行キ人カ見テ居ルカラ帰ラウト嘘ノ事ヲ云

ツテ皆ヲ連出シマシタ次第テス」ト供述ヲ為シ居ルモノナリ即チ被告人ハ第二ノ犯

罪ノ前ニ計画謀議シタル洋服屋ニ対スル強盗ノ犯行ハ不能トナリシヲ以テ断念シ帰

ラウト他ノ相被告人ヲ勧誘シタルモノナリ而シテ第二ノ犯罪タル被害者Eノ家ニ行

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キシハ相被告人Iニ脅カサレ単ニ同行シタルノミニテ同人ノ家ニテ酒ヲ呑ミJトK

ナル相被告人カ狂言ノ喧嘩ヲ為シタルヲ見テ真実ノ喧嘩ト思ヒ仲裁シタル事実ハ明

白ニ第二ノ犯行ニ付キ共謀ノ事実無カリシコトヲ認定スルニ足ルヘク又小便ニ行ク

ト云ヒ被害者ノ家ヨリ出テ向側ニ行キシヤカンテ居タトノ供述ヨリミレハ犯行ニハ

直接行動スルトコロナク屋外ニテ見張役程度ノ犯行ヲ為シタルモノナルコトハ第一

審公判ニ於ケル被害者Eノ証言ニ「二三人見張ヲシテ居タ」トノ主旨ノ記載アル点

ヨリ真実ナルコトヲ認定シ得ヘキナリ果シテ然ラハ被告人ハ第二ノ犯罪ニ付テハ初

メヨリ共謀シタルコト即チ共同正犯ノ犯意ナク見張リ行為ノ従犯的所為ヲ為シタル

ニ過キス而モ此際ハ犯行ヲ嫌悪シツヽ幇助シタルモノナリ依テ被告人ノ所為ハ従犯

トシテ刑法第六十二条ヲ適用セサルヘカラサルニ原判決ハ共同正犯ト認定シ刑法第

六十条ヲ適用シタルハ重大ナル事実ノ誤認アリ且ツ不当ニ法令ヲ適用シタル違法ア

ル判決ナリト謂ハサルヘカラス故ニ原判決ハ右理由ニ因リ破棄ヲ免レサルモノト信

ス」というにある。

しかし、原審が所論第二の犯罪事実を認定したのは、原審相被告人Fの原審公判

廷に於ける供述、被告人A及び原審相被告人Gの各予審第二回訊問調書中の同人等

の供述記載並びに被害者E提出にかゝる強盗被害始末書の記載等に基ずいたのであ

つて、論旨引用の原審公判廷における被告人の供述その他の証拠は、事実認定の資

料に供しなかつたものであることは、原判決を見れば明かである。しかも原審のな

した右の事実認定は、原判決挙示の前掲証拠に照らし、これを肯認するに十分であ

る。論旨は主として原審の採用しなかつた被告人の供述に基ずき、被告人が本件犯

行につき共同正犯の犯意なく、単にこれを幇助したに過ぎないと論断するのであつ

て、畢竟事実審である原審の専権に属する証拠の取捨判断乃至事実認定を非難する

に帰着し、上告適法の理由とならない。

被告人F弁護人南利三の上告趣意は「原判決は被告人Fに対し懲役五年の判決を

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言渡したるも刑事訴訟法第四百十条第一項第十三号並日本国憲法の施行に伴ふ刑事

訴訟法の応急的措置に関する法律第十条同第十二条に違背の疑あるものにして到底

破毀を免れないものと信ず即ち原審公判手続に於て右被告人Fの弁護人は本件強盗

被告事件の同人の利益の為めに相被告人Dの証拠調申請を提出し原審は之が申請を

却下したことは記録上明かである。右Dに対しては単に予審調書のみで日本国憲法

の施行に伴ふ刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十条に基き証拠価値の存在し

ないものである。然して本事件に関しDは主謀者であり且つ指導的重要なる地位に

ありて被告人Fの如きは当初単純なる動機より右D及J等の一連の犯罪計画に加担

したることを深く後悔し前記主謀者等より脱退せんとしたのであるがD、J等は犯

罪事実の発覚を恐れ被告人F等の脱落を常に威嚇を以て警戒防止し為めに被告人F

は追随を余議なくされて居つたのが真想である本被告事件敢行の動機並其状況に関

し右Dは最も重要なる関係にあるに不拘之が証拠申請を却下し証拠調を為さなかつ

たことは前記各法令に違背する疑ひあるもと信んずる以上の理由により上告の趣意

を陳述し御審理を仰ぐ次第である」というにある。

しかし、原審は所論第一審相被告人Dに対する予審訊問調書を、事実認定の資料

に供しなかつたのであるから、該予審訊問調書が、仮に所論のごとく証拠価値のな

いものであるとしても、そのこと自体は原判決の事実認定の当否に影響するところ

はない。又記録を精査するに、原審公判廷において、被告人Fの弁護人が右Dの証

拠調申請をなし、原審がその申請を却下したことは所論のとおりであるが、原審が

被告人Fの犯行として認定した事実は原判決挙示の証拠に照らして、これを肯認す

るに十分であるから、原審が、該証拠申請を却下したのは、その挙示する証拠に基

ずき既に事実認定上心証を得たためであることが窺われる。従つて、仮に論旨の如

く右Dが本件犯行の主謀者であり、指導的地位にあつたとしても、右証拠調の結果

は、論旨の自認するように、被告人Fの犯情のみに関するもので、原審の為した罪

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となるべき事実の認定を左右するには足らないのであるから、所論は結局事実審た

る原審の専権に属する証拠調の程度に関する裁量を非難するに帰着し、上告適法の

理由とならない。しかも、右Dについては、昭和二十二年一月十五日以来、右証拠

申請当時に至るまで、疾病のため同人自身に対する公判手続の停止せられていたこ

とが、記録上明かであるばかりでなく、原審は同人に対する予審訊問調書を断罪若

しくは科刑の資に供していないのであるから、論旨が原審の右証拠申請を却下した

一事を捉えて、所論の如き法令の違背ありと為すのは当を得ない。

よつて刑事訴訟法第四百四十六条に従い主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官幸節静彦関与

昭和二十三年一月十五日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

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